もし太陽のコアがIntelCoreだったら

春合宿でやったLTスライドの内容についてじっくり語ります。

まず以下がスライドです。

 
この内容に思い至ったきっかけとしてまずWikipediaの太陽核に関する記述があります。

太陽核 - Wikipedia

核での単位時間あたりのエネルギー生産量は、中心からの距離によって変わる。太陽の中心では、核融合の効率はモデルからの推定で、約276.5ワット/m3と見積もられる[3]。太陽の内部における体積あたりの熱生産量の最大値は、コンポストの山の熱生産量密度と比較される程度である。太陽から放出される莫大な熱量は、体積当たりの熱生産量ではなく、太陽全体の大きさに起因する。

このように太陽の体積あたりの熱密度は中心部であってもコンポスト、つまり生ごみの発酵と比較できる程度のものであるそうです。

またハードウェア系の研究室に所属していることもあって現在の半導体の熱密度の大きさは授業でも何回も取り上げられます。半導体は小型化しているので面積あたりの消費電力は大きく増加し続けて冷却方法などの問題を抱えつつあります。

この2つの事柄を合わせて、もし太陽の熱密度が半導体並であればどうなるのかという疑問がわきました。

 

まず太陽のコアの平均熱密度を求めましょう。

Wikipediaによると太陽の放出エネルギーは3.846×10^26Wでその殆どが中心核で発生しています。また核は半径10万kmだそうです。純粋に割ってやると91w/m^3となります。明るめの電球くらいですね。

次に最新のCPUであるIntel Core i7 8700Kの熱密度を求めます。IntelのデータシートによるとTDPは95Wです。またIntel Core i7-8700K delidded | VideoCardz.comによるとダイ面積は150mm^2だそうです。厚さを1mmと仮定すると体積は150mm^3となり、熱密度は6.3×10^8W/m^3となります。太陽のコアの平均熱密度のおよそ700万倍です。

 

以上のことから太陽のコアがIntel Core と同等の熱密度なった場合、発生エネルギーは700万倍となります。

輻射するエネルギーも700万倍となると仮定すると逆二乗より2600倍の距離にいれば単位面積当たりの受けるエネルギー量は現在と同量になります。

そして2600倍の距離つまり2600天文単位を公転する場合、公転周期は2600^(3/2)の132574倍、つまりおよそ13万年となります。

 

次に太陽が700万倍のエネルギー(2.6×10^33W)を生産していた場合の表面温度を雑に計算してみましょう。

まず、太陽は変形せず黒体輻射でのみエネルギーを放出すると仮定して生産エネルギーと放出エネルギーの釣り合う表面温度となるとします。シュテファン=ボルツマンの法則より温度Tの黒体が輻射する1m^2あたりのエネルギーは5.67×10^-8×T^4です。これと太陽の表面積6.08×10^12km^2から表面温度Tの場合太陽が放出するエネルギーが求まります。これと生産エネルギーとの比較により表面温度は290000Kであると求まります。もっと何億Kとか行って欲しかったんですけどエネルギーの1/4乗でしか温度が増えなかったので残念ですね。

 

最後に290000Kの輝きがどんな感じか推定してみましょう。

プランク分布によりある温度Tでの輻射される各波長の光の強さが求まります。以下のグラフに290000Kの分布を青、実際の太陽の表面温度である5770Kを橙色で示します。

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 差があまりにも大きかったので片対数グラフで表示しています。見ての通り5770Kでは可視光領域でほぼ平坦なのに対し、290000Kでは波長の短いあたりに鋭いピークがあります。ヴィーンの変位則に基づいて計算するとピークは10nmとなり、これはX線と紫外線の境界上となります。

さてこの290000Kの光を浴びるとどうなるのでしょうか。先ほど2600天文単位まで離れれば単位面積当たりの受けるエネルギー量は現在の地球と同様になると話しましたが、このグラフを見るとエネルギーの大半を紫外線として放出しているので目で見るとかなり暗いでしょう。またオゾンが吸収する紫外線は200nmから300nmまであたりっぽいので290000Kの光に多く含まれる波長の短い紫外線は地表にほぼそのまま降り注ぐでしょう。死んでしまいますね。

この有害な紫外線をあまり受けなくて済むような距離まで離れると、今度は受けるエネルギー総量が少なくなり過ぎそうですし、290000Kの太陽にはハビタブルゾーンなさそうですね。

 

まとめ

  • 太陽は熱密度は大したことないが体積が膨大なので総エネルギー量が大きい。
  • CPUの熱密度はかなり大変な領域にまでなっている
  • 290000Kは最早輝きの向こう側